約 1,149,044 件
https://w.atwiki.jp/2jiseihaisennsou2nd/pages/638.html
リブート ◆HOMU.DM5Ns …… ……………… …………………………………… では、聖杯戦争を始めます 所詮、人間など誰であろうと『魔王』に成りうる存在だ “あぁ、そうさ。人類は負けない。最後には必ず勝つ。―――だが、いつまでこれを繰り返すのだ?” 感じられなくてもいいの、ただ忘れないで。人類はまだ希望が無くなった訳じゃないことを……。 ――――生きろ。 もしかしてそこのキミ、おれをサーヴァントとして呼んじゃったマスターなの? いいだろう、人間……いや我が主(マスター)――――闘争を始めよう マ、マスター……揉むだけならば、そんなァッ! にゅう、乳頭は! そんな、な、なんで服の上から的確に!? もし、この聖杯にも穢れがあったならば……その時は…… ――――Amen 待たせたわね全国の子ブタ! 復活ライブの始まりよ! ———願いは、自分自身のためだけにしろ。 我が槍は殿下の栄光を闢き、我が盾は殿下の栄光を覆う」 小娘め……俺は歳取って出直して来いと言ったんだがな……ガキになって来るとは面白れぇじゃねぇか 真っ平御免だ。俺の心も魂も命も俺だけのものだ だが、これだけは言っておく。俺を真に支配しようとだけは考えるな……! 聖杯を精液と愛液でいっぱいにするためかな! 私はキャスター。――――そして、未来のあなた自身 その力があれば、全ては統一される お辞儀をするのだ 余が重んじるのは絶対なる力のみ。聖杯はまさしく余が手に入れるに相応しい力の塊なのだ ドーモ、アサシンです さあ祭りだ、祭りだ、祭りだワショ――――イwwwwwwww …………やってみよう ……朧 少々趣向は違うようだが、やはり君は私と同じ『殺人者』のようだね。 ・・・・■■、■■■■ ■■■■――――!!」 ……そうだ、次の聖杯戦争でもコンビ組もう! 優勝してFateの次回作に出れますようにって聖杯とキノコちゃんにお願いすればいいよな! 始点記録(レコード)、保存。 【空想電―― せめて名前を教えて欲しい。僕の名前を、僕が何というカタチをしていたかを。そしてできることなら呼んで欲しい。でも、無理だろうな。 な、貴様、狂戦士の分際で───ガッ!? …………と……ちゃ…… ――xxxxさん ……また、学校に……ま、ど…… 行くぜ───バーサーカー。数分と持たねぇ身体だが、その命、幾らか貰っていくぜ ――悔しい ヌウウウウアアアアアアアアアアアアアアアーーーーーーーーーーーーーーーーーッ!!!! ひとりぼっちでいい。でも死ぬのはいや。だっておかしいから。でもしぬのはこわい。ねえそうでしょ―― ………… 見なよ、やっぱりこの世界なんて―――― イイイイイイヤアァァァーーーーッッ! ―――― ……はは さよならだ、"伯爵" ――約束なんか、するもんじゃねえな。 …………ああ…………良い夢、だった………… ―――Amen 最終記録(レコード)、保存。 システムの正常再動を確認。 おまたせしました。 リブートします。 ◆◆◆◆ ―――空に月が浮かんでいる。 何も不思議な光景ではない。 日が沈み空が暗色に包まれる夜になれば、雲が覆いにならなければ、誰もが毎日目にするものだろう。 物珍しい欠け方もしていない。いつも通りに見える月。 そう、月に変わりはない。 たとえ、異星文明の残した地球の観測装置ムーンセルが置かれた神のキャンバス台という真実があったとしても。月は変わらず其処にある。 あるとすればそれは、見上げる側の心境と、彼らが立つ位置の変化だろう。 それは方舟。 宇宙にすれば一時の、しかし地球からすれば遠大な軌道で周回する星を泳ぐ船舶。 月のムーンセルと交信し、地球全てを記録している膨大な演算能力を用いた舟、アークセル。 古き神代の頃より存在し、今も役目の為稼働している『古代遺物(アーティファクト)』。聖書の一説に乗るノアの方舟の再来だった。 その内部たる霊子世界に招いた数十名の人間(マスター)。 そしてその『つがい』となる、歴史に名を刻んだ英霊(サーヴァント)。 時間の前後を問わず、世界の壁も関係なく、編纂も剪定の区別もなく。 ありとあらゆる境界を超えた組み合わせが集い、覇を競い、月に至る階段に足をかける権利を得る。 事象改変の域にまで至った演算装置は万能の願望器に等しい。 おしなべて願望器を求める争いはこう呼ばれる習わしがある。 ――――――聖杯戦争。 御子の血を受けた杯。世紀を跨いで追い求められる、奇跡を叶える器の争奪戦と。 そして現在。 アークセル内で再現された聖杯戦争の舞台『冬木市』の一角に建てられたキリスト教会。 礼拝堂には一人の少女が立っている。銀色の長髪を下ろした修道服の少女は目の前の虚空に手を出して指を滑らせて『業務』をこなしている。 聖杯戦争の運営役に選ばれた上級AI、カレン・オルテンシアは自らの役割にとりかかっていた。 サーヴァントの戦闘を人目につくのを禁じるルールを敷いてる以上、自然と戦いは夜に頻発する。 地上の聖杯戦争での監督役の代理として、NPCの魂の改竄による街の沈静化を図る。それがカレンに与えられた役割の一つでもある。 今後も街の裏で続いていく戦いは激化の一途を辿る。隠蔽対策の頻度は時を追うごとに増していくだろう。 優勝者である最後の一組が決まったその時、果たしてNPCの住民達はどうなっているのか。そもそも街は原型を保てているのか。 そこに思考を向ける事はなく、カレンは業務を粛々と進行させていく。 じき夜が空ける。 箱庭内の聖杯戦争が本格的に開始して丸一日が経った。 深夜と黎明にかけて繰り広げられた乱戦も波が引き、落ち着きを見せ始めている。 サーヴァント戦は夜が本番といっても、マスターには予選時代に定められていた役割(ロール)がある。学生であったり社会人であったりと部類は様々だ。 規則性を破り他のマスターに怪しまれる危険を無くそうと思えば、この時分に積極的な行動は控え休息に入る。 少しでも情報を得ようとサーヴァント単独に行動させたり、夜勤が常である等時間に囚われる必要性のない職であれば話は別だが、接触の機会は目に見えて減るだろう。 よって今はカレンの仕事も穏やかなものだ。NPCに大規模な混乱が見られない以上忙しなく働く必要はない。 「聖杯戦争には、常にイレギュラーがつきものだといわれています」 白く細い指が、虚空に浮かぶウインドウを踊る。 オルガンの鍵盤を鳴らすようにして、軽やかに、厳かに。 「この、月を望む聖杯戦争をはじめとした、世界に複数行われている聖杯戦争。 その始点、全ての聖杯戦争の原型とされるのが、この冬木の地で生まれた聖杯戦争。 ですが、その冬木でさえ完全な形で儀式が完遂され聖杯―――願望器が優勝者の願いを叶えたという記録は、アークセルには存在していません」 そこには多くの画面が映っていた。 NPC達のものではない。より細かで、価値の高い、膨大な密度のデータが行き交っている。 「はじめは召喚した英霊を制御できず、儀式ですらない殺し合いで無為に終わった。 次回はルールが整備され戦争の体が成っても、徒に時間ばかりが過ぎ去った。 三度目は、始まって真っ先に手に入れる器が壊れ全てがご破算。 四度目は比較的まっとうに続いた形であったけれど、前回で生んだ歪みが全ての前提を覆した。 そして五度目は、それまでの負債が回って完全に破綻した」 言葉を紡ぎながら、作業を滞らせる事なく。聞かせる聴衆も子羊もいない、伽藍とした講堂には音色だけが反響する。 「魔術師ではないマスター。規格外のサーヴァント。 英霊の座からの来訪者を使い魔と定義付ける事により起こる様々な弊害。 神域の魔術師が集まり造り出した聖遺物とはいえ、たった五度の施行で見えた傾向などたかが知れてるというもの。 予測外の事態が出るのも当然のことでしょう。ええ、なら、今回もそういうことなのでしょう」 ―――いや。 果たして聞き届ける者はいた。迷い人ではなく、彼女と職務を同じくする信仰の徒が。 赤い絨毯の身廊に立つ鎧姿の少女。カレンは独り言ではなく、そこにいる人物に向かって言葉を送っていた。 「そして、彼女がそれである。ということかしら、ルーラー?」 ステンドグラスから差し込む月光に眩く照らされる、鎧装束に身を包んだ少女。 夜に溶け込むような銀色のカレンに対して、幻想的な芸術画を思わせる金砂の髪。 どちらも、神の家に置かれるには似合いすぎるぐらいには神聖ではあろうが。 サーヴァント、ルーラー、ジャンヌ・ダルク。 異常の見られた現場に直接赴き判断を下す聖杯戦争の"裁定者"は、事態を収拾し拠点である教会に還ってきていた。 ◆◆◆◆ 『冬木の聖杯戦争』における教会には、ふたつの役割がある。 神秘の隠匿、サーヴァントの戦闘により起きた被害の事後処理。表社会に魔術の存在を知られてはならないという絶対の法。 歪めた情報を報道に流しての隠蔽、暗示による記憶操作、時には被害を受けた公的組織へ補填する等して徹底的に真実を闇のままに封じ込める。 そしてもうひとつは、サーヴァントと令呪を失い、聖杯戦争から敗退したマスターの保護だ。 他にマスターを失いはぐれたサーヴァントが出た場合、聖杯は新たに契約者候補に令呪を再配布する。 だがマスターに適合する資質の都合上、自然と新たに選ばれるマスターは以前にマスターであった人物が選ばれる傾向が高い。 その為、万全を期するなら他のマスターはサーヴァントを失ったマスターであっても殺そうとし、狙われる側も駆け込み寺を必要とする。 その用意として教会内には幾つかの客間が設けられており、その時の名残として、この電脳上の冬木教会にもセーフハウスの機能がつけられていた。 ここは上級AI、裁定者の権限が届く地帯。余剰リソースを与え実在証明の楔を打ち込めば、教会の敷地内にいる限り、サーヴァントを失ったマスターでも消滅を免れられる。 「まさか、本当に使う機会があるだなんて思ってもみなかったけれど」 「ごめんなさい。急に客間の用意を頼んでしまって」 カレンの零したように、本来これは使われる事はないとされていた機能だ。 なのでルーラーから『空いた部屋の準備とリソースを使用させて欲しい』と連絡があった時はどうしたことかと思ったものだ。 「ああ、そこはいいのよ。下働きは慣れていますし。 私というAIの元になった人物も、そういう奉仕に従事していたようですし。 私が言いたいのは―――その理由のほう」 すぅ、と目を細めルーラーを見据える。 睨むというほどではない透明な金の瞳は、なのに見る者に息苦しさを与えるような意を含んでいる。 「マスター・宮内れんげの教会での保護。 中立であるべきルーラーがサーヴァントを失ったマスターを、それも違反行為を犯したサーヴァントのマスターを自ら匿うだなんて、本気かしら?」 南東の森でルーラーが保護して連れてきたれんげは、用意した客間で既に眠っている。 ただの子供の身で深夜の時間まで起きていたのだ。聖杯戦争を自覚していなくても心身の疲労は募っていて当然だ。 ひとまずカレンの承諾を得てから簡易的に身体スキャンを行い、部屋に案内して着替えさせるなりベッドに潜り、ものの数秒で熟睡に入ってしまった。 目が覚めるのは朝方か。子どもは眠るのも起きるのも早いものだ。 「ええ。本気でなければこんな決定は下しはしませんよ」 叱責・諫言ともいえるカレンの言葉にも、ルーラーは紫水晶の瞳を翳らせることなく答えた。 「―――方舟に乗り込む以前にサーヴァントと契約。記憶も失わず、NPCのロールも保有していないマスター、ですか」 道すがらにれんげから今までの簡単な経緯を聞いたジャンヌからの報告に、カレンも怪訝な表情をする。 それだけ、このマスターが異常極まるケースであるのを物語っている。 「契約が消失した後になっても自己崩壊の兆しは皆無。霊子を保っているだけならば前例のケースがあるけれどそもそも対象が不明、前者についてはまったくの想定外。 確かに、イレギュラーの塊のような参加者ね」 サーヴァント無きマスターの生存の抜け道。それ自体は存在する。 過去に裁定者二人が直に目撃している、岸波白野を介した、遠坂凛と白野のサーヴァントとの疑似的パス共有だ。 凜自身のランサーを失って新たなサーヴァント・アサシンと契約するまでの僅かな時間ではあったが、肉体が消える兆候は現われなかった。 これは然程の問題もないとして裁定者側も認可していた。では一体れんげと契約を繋いでいるのはどのサーヴァントなのか。 更に問題とするべきはそれ以前の話。 方舟外でサーヴァントが活動して、第三者に『木片』を渡して召喚されたという、異例の事態についてだ。 「カレン。彼女について、分かったことは?」 「上級AIの権限でマスターの情報は取得しています」 浮かび上がるウィンドウに情報が記載される。 身体スキャンで得たれんげの内部データ。そして、カレンが持ち得る聖杯戦争参加者の詳細データだ。 「宮内れんげ。旭丘分校小学1年生。奇特な思考回路を持ち周囲を困惑させる発言をするものの成績は優秀。好物はカレーライスで苦手なものはピーマン。口癖は「にゃんぱすー」」 「……それ以外は?」 「飼っている狸の名前は「具」ですね」 「ほ、本当にそれだけなのですか!?」 実にのんびりとした情報(マトリクス)であった。ルーラーも思わず突っ込んでしまう。 AIに虚偽の申告は許されず、また不可能。彼女らに課せられた基本則はルーラーも理解しているが、それにしてもあまりにもな結果である。 「ないものは出せません。彼女の個人情報はそれで全てです。 それとも細かな思考ルーチンや地上での行動ログも閲覧しますか?退屈なだけの日々なのに、愉快なものを見ている気分になれますよ」 「では、本当に彼女は―――」 虚偽は述べていない。隠された真実はない。それがれんげの全てであるということは。 悪意の扇動者に出会う因果がまったく見つからないというのなら。 「肉体の魔術的特質、魂の因果的資質、いずれにも反応なし。 神秘に触れる環境下にもなく、特殊な過去も経験していない。 意思なく資格なく、唐突に現われた悪魔に謀れ、流されるままにアークセルに乗り込んでしまった迷い子、いえ、密航者とでもいうべきかしら」 密航者。 参加権である木片は持っていても経緯が不条理だ。イレギュラー扱いもやむなしである。 だからそう呼ぶことは、ある意味で間違いではない。 「……資格なき、とは違うでしょう。彼女もまた一人のマスターであったことには変わりありません」 「ええ、そうね。彼女もれっきとしたマスター。それは事実。 そして既にサーヴァントを失った敗退者でもある。本来ならとうに消滅し、魂は在るべき場所へ帰還しているはずの残滓なのに」 自ら戦うと決めたわけでなく、強制的に連れてこられたマスターを知っている。 魔術や異能の素養がなくても、戦おうとするマスターが存在する。 れんげよりも幼い子供のマスターだっていたのだ。 能力や意思に依らず、ここに集ったマスターには誰もが聖杯に触れる資格を持つべきだ。 あの交渉の場で、本多・正純にも語った言葉だ。 「あの子をこのまま消しはしません。見つけた異常を是正しなければ、それこそ運営の綻びの温床となりかねません。 多くの謎が残っている。方舟の中を通れてしまうだけの抜け道が出来ている。それを確かめなくては。そうでしょう?」 「私情で生かすのでなく、聖杯戦争を恙無く運営させる裁定者として宮内れんげは活かすべき、と?」 「マスターとしてより、ただの子供として見ている。そこは否定しません。救えるものならそうしたいとも」 子供だからという贔屓。捨てられない感情はある。さりとて感情に走って差配を誤るほど子供でもない。 伝えたいのは、あの子は罰を受けなくてはならないような事をしたわけじゃない、ということだけで。 「それだけではない―――彼女が関わる啓示でも見えた?」 「……わかりません」 今度は、答えるまでに少しだけ間があった。 「見えた景色がある。夜の街と鈍い光。その中を動く影を追う中で、彼女を見つけた。 けどそこにどんな意味があるか、どう捉えるべきか……今は測りかねています」 降りた啓示をどう受け取るかは当人の解釈による。 同じ光景を見た二者が、様々な差異から違う行動を取ることもあるだろう。 ルーラーはれんげを見たわけではない。ただ夜の街のざわめく様を俯瞰して、そこに潜む歪みの原因を追いに向かった。 しかしその根源たるベルク・カッツェは一足先に退治され、待っていたのはマスターであるれんげだった。 そしてルーラーをれんげの元に導いたのはアンデルセン神父。ランサー・ブラド三世のマスター。同じ神を信じる同士によって。 因果の線はあまりに複雑に絡み合っている。幾重にも積み重なって螺旋に捻れて、どんな結果を招くか見当もつかない。 あの時は保護を優先して手を取ったけれど。今更になって思いを巡らせてしまう。 生きているが死んでなければいけない者。敗残者にして廃棄物。 それが今のれんげの立場だった。存在と無の曖昧な境界線、その上に立っている曖昧な命。 今も現世に繋ぎ止めている、孤城の主と同じように。 力と呼べる一切を持たず、戦う意志すら皆無の幼子。悪辣な英霊に誑かされ巻き込まれた哀れな被害者。その認識で正しいはずだ。 それ以外に、いったいどんな価値を見るというのか。 「それでも、何度やり直すことになっても私はこの手を伸ばしたのでしょう。そこだけは、後悔はありません」 受け入れるリスクや矛盾、全てを承知の上で。 街の誰も記憶していない、何処にも行く事のできない、ひとりぼっちの魂。 世界にとってないに等しい小石を"在る"のだと、ジャンヌは信じて肯定する。 納得に足る理屈は幾つもある。けれど動いた理由はたったひとつで。結局それだけで迷いは晴れてしまう。 愚かな女だと自身(ジャンヌ)は思う。それでこそ聖女に相応しいと誰かは喝采する。 啓示の導かれた行動は正しい道筋に辿り着く。それは呪いにも似た宿命を見た者に背負わせる。 たとえその通行料に幼子の犠牲が含まれているとしても。 「そう。ならこれ以上、私から言うことは何もありません。 積極的に肯定はしませんが、あなたの願いが叶うのを祈るぐらいはしてあげます」 カレンはジャンヌのマスターではない。同じ神を信じる徒であり、同じ裁定の任の同士であるが、それぞれが別個の人格だ。諫言はあっても強制の権限は持たない。 時には意見を違えることもあるし、それが相互に変化を及ぼす場合もある。 現にエラーは生まれている、どうあれ対処は必須だ。最大の手がかりを手放すべきではない。れんげを調べることは役割上外せない。 裁定者の枠組みを外れた動きでもなし、保護も正常な対応だろう。 それにあの子がマスターの資格を持つのなら―――試すことは、多い。 「まあ、これを知った外野がまた藪をつついてくるかもしれないけど」 「……重ね重ね迷惑をかけてごめんなさい」 「一度こうと決めたらてこでも動かない、周囲を巻き込むのも構わず爆進―――――ふふ、オルレアンの乙女らしくなってきたわね」 「わかりました、わかりましたから……!生前のことをそんなにつつかないでください……」 すると、通知音と共に、窓に映っていた無数の画面が消えた。 代わりに現れるのは一つの盤面だ。チェスの駒のように整理された名前。 そのうちの幾つかは、赤い壁に覆われるようにして塗り潰されている。 消せぬ死線(デッドライン)。魂の切れ緒。既に敗れた脱落者の情報。 サーヴァントもマスターも、この箱庭で消滅した参加者は全て克明に記録されている。 これらの死の羅列を以て方舟は一対の選別の材料とするのか。それはルーラーには分からない。 ルーラーはそれを見上げた。これは進行の証であり、あるいは罪の形でもある。ただ逸らさずに受け止める。 「いずれにせよ、夜がもうじき終わる。 イレギュラーはあれど状況は順調に進行。脱落者は全体のおよそ三分の一。 この調子なら、四日目を待つまでもなく勝者も決まるでしょう。我々も、あくまで我々の職務を続けていくまで」 願いは飛翔する。遥かな月を目指して大空を駆ける。 誰彼の持ち込んだ願いを運ぶ、二十八対の渡り鳥。 翼は砕け、道半ばで飛ぶ力を失い、固い海原に叩きつけられる未来しか待っていなくても。 「虚ろな揺り籠に微睡むのではなく、夢が届く新天地に至るために、貴方達はここに集ったのだから」 再開の時は此処に。 月を望む巡礼の旅人よ。辿り着く日まで、どうか足を止めないで。 「さあ、聖杯戦争を続けましょう――――――」 【D-5/教会/2日目 未明】 【カレン・オルテンシア@Fate/hollow ataraxia】 [状態]:健康 [令呪]:不明 [装備]:マグダラの聖骸布 [道具]:リターンクリスタル(無駄遣いしても問題ない程度の個数、もしくは使用回数)、移動キー(教会内の燭台、月海原⇔教会の移動可能)、??? [思考・状況] 基本行動方針:聖杯戦争の恙ない進行時々趣味。 1.キャスター(ヴォルデモート)との会談について話す。必要なら職務の手伝いも。 2.ルーラーの裁定者としての仮面を剥がしてみたい。 3.言峰綺礼に掛ける言葉はない……があのキャスター(ヴォルデモート)との接触には複雑な感情 4.れんげの保護はひとまず了承 [備考] ※聖杯が望むのは偽りの聖杯戦争、繰り返す四日間ではないようです。 そのため、時間遡行に関する能力には制限がかかり、万一に備えてその状況を解決しうるカレンが監督役に選ばれたようです。他に理由があるのかは不明。 ※管理役として、箱舟内のニュースや噂などで流れる情報を操作する権限を持っています。 →操作できるのはあくまで「NPCの意識」だけです。報道規制を誘発させることはできますが、流出してしまった情報を消し去ることや、“なかったこと”にすることはできません。 ※教会には『地上での冬木教会の機能』として敗退マスターを保護するための機能が残されています。本来は使用される想定のない機能です。 【ルーラー(ジャンヌ・ダルク)@Fate/Apocrypha】 [状態]:健康 [装備]:聖旗 [道具]:??? [思考・状況] 基本:聖杯戦争の恙ない進行。 1.??? 2.れんげを教会で保護する。 3.その他タスクも並行してこなしていく。 4.聖杯を知る―――ですか。 [備考] ※カレンと同様にリターンクリスタルを持っているかは不明。 ※Apocryphaと違い誰かの身体に憑依しているわけではないため、霊体化などに関する制約はありません。 ※カッツェに対するペナルティとして令呪の剥奪を決定しました。後に何らかの形でれんげに対して執行します。 ※バーンに対するペナルティとして令呪を使いました。足立へのペナルティは一旦保留という扱いにしています。 ※令呪使用→エリザベート(一画)・デッドプール(一画)・ニンジャスレイヤー(一画)・カッツェ(一画) ※カッツェはアーカードに食われているが厳密には脱落していない扱いです。 サーヴァントとしての反応はアーカードと重複しています。 【宮内れんげ@のんのんびより】 [状態]ルリへの不信感、すいみん中 [令呪]残り1画 [装備]なし [道具]なし [所持金]十円 [思考・状況] 基本:かっちゃん! 1.かっちゃんあっちゃんはっきょくけんが帰ってくるまで待ってるん。 2.るりりん、どうして嘘つくん? 3.はるるんにもあいたい [備考] ※聖杯戦争のシステムを理解していません。 ※昼寝したので今日の夜は少し眠れないかもしれません。 ※ジナコを危険人物と判断しています。 ※アンデルセンはいい人だと思っていますが、同時に薄々ながらアーカードへの敵意を感じ取っています。 ※ルリとアンデルセンはアーカードが吸血鬼であることに嫌悪していると思っています。 ※サーヴァントは脱落しましたが、アーカードがカッツェを取り込んだことにより擬似的なパスが繋がり生存しています アーカードは脱落しましたが、彼は"生きてもいないし死んでもいない"状態に還ったので、かろうじてパスも生きています。 ※教会によって保護されています。教会内にいる限りは消滅の心配はありません。 BACK NEXT 161 狂い咲く人間の証明(前編) 投下順 163 ウェイバー・ベルベットの憂鬱(何度目) 161 狂い咲く人間の証明(前編) 時系列順 163 ウェイバー・ベルベットの憂鬱(何度目) BACK 登場キャラ:追跡表 NEXT 155 絆‐Speckled Band‐ カレン・オルテンシア [[]] 161c 狂い咲く人間の証明(後編) ルーラー(ジャンヌ・ダルク) [[]] 宮内れんげ [[]]
https://w.atwiki.jp/2jiseihaisennsou/pages/178.html
人物背景 第五次聖杯戦争(Fate/stay night)で、キャスターであるメディアによって召還されたアサシンのサーヴァント。 ルール違反の上に成り立っている召喚なので、本来のアサシンではない架空の英霊(正確には亡霊)が召喚された。 召還の際に触媒に使用した柳洞寺の土地を依り代とし、「マスターの存在しない英霊」として強引に現界している。 その為に土地の近辺しか動くことが出来ず、山門の番人のような役割を担っている。 真名は佐々木小次郎ということになってはいるが、その正体はあくまで「佐々木小次郎」という存在を演じるのに最も適した無名の剣士が その名を借りてサーヴァントとして召還されたという、言わば「佐々木小次郎の殻を被った名もなき亡霊」。 元は読み書きもできず名もない百姓で、生涯戦うこともなく剣の鍛錬をし続けた柳桐寺に縁のある剣士だったと思われる。 存在するはずのない英霊ではあるが、その剣術の腕はセイバーを相手に互角以上に渡り合い (メディアの援護があったとはいえ)バーサーカーであるヘラクレスを退ける程のもの。 公式で「第五次において単純な剣術の腕で最強なのは小次郎」と言及されており、剣士としては相当な実力である。 【二次キャラ聖杯戦争】ではイレギュラーな方法を用いたキャスター(蘇妲己)によって柳洞寺で召喚された。 パラメーター 筋力C 耐久E 敏捷A+ 魔力E 幸運A 気配遮断:D…自身の気配を消す能力。アサシンのDランク気配遮断は「透化」スキルからの派生。 厳密には気配遮断スキル自体は有していないが、「Dランク気配遮断スキルと同等の能力がある」という意。 心眼(偽):A…直感・第六感による危険回避。虫の知らせとも言われる、天性の才能による危険予知。視覚妨害による補正への耐性も併せ持つ。 透化:B+…明鏡止水の心得。精神干渉を無効化する精神防御。第五次のアサシンは正式なアサシンではなく、 本来の意味での「気配遮断」のスキルは持たないが、このスキルが気配遮断の代用にもなっている。 宗和の心得:B‥同じ相手に何度同じ技を使用しても命中精度が下がらない特殊な技法。攻撃を見切られなくなる。 『燕返し』 種別:対人魔剣 最大捕捉:1人 宝具ではなくスキル。修練を重ねた結果編み出した技。 かつて暇つぶしにツバメを斬ろうとした際、空気の流れを読まれてことごとく避けられた結果、それでもなお打ち落とそうとして編み出した。 無形を旨とする彼が唯一決まった構えを取る。 相手を三つの円で同時に断ち切る絶技。三つの異なる剣筋が同時に(わずかな時間差もなく、完全に同一の時間に)相手を襲う。 魔術ではなく魔剣。人の業のみでたどり着いた武術の極地であり、「分身」の魔技。 円弧を描く三つの軌跡と、愛用する太刀の長さが生み出す回避不能の必殺剣。 多重次元屈折現象、と呼ばれるものの一つ、らしい。 正式な英霊ではない為、宝具は存在しない。
https://w.atwiki.jp/sentakushi/pages/553.html
800 名前: 隣町での聖杯戦争 ◆ftNZyoxtKM 投稿日: 2006/11/11(土) 05 06 20 「じゃ、それが嫌ならこれと言うことで」 「ス、スケスケー!?」 絶叫が耳に響いた。 取り出された布は、ドレスと呼んで良い物か悩むような、極めて薄い代物であった。 手に持たれているのに、持っている手の全て見える。 とにかく、その位薄い代物であった。 「そ、そんな悩殺スタイル似合わねえよぅ……」 「似合うかどうか」 「やっぱり試してみないとねえ」 途方もなく邪悪な笑みを浮かべる二人。 他の面々は。 「ごめん、正直ちょっと見てみたいかも」 「私も好奇心を優先させたい」 「そうねー、わたしもカエデのスケスケ姿見てみたいなー」 「は、薄情なー!」 視線をそらした途端、左右に回り込まれて腕を捕まれた。 「隙ありー」 「ぬあー! ま、待ってくれー!」 蒔寺が隣の部屋に引きずられていく。 ルヴィアとキャスターのコンビネーションは、正に対象を捕食する唇と舌のようであった。 「ぬ、脱がさないでー!」 「ほほほ、却下ですわー」 「わー! どさくさに紛れてチチ揉むなー!」 「うわ、スタイル良いー……鍛えてるとこうなるのかな……」 「スタイルなら鐘っちのほうが良いから! 見逃せおんしゃらー!」 「はーい、脱がせたー!」 「はやっ! なんだその脱がせのスピード! アンタらも衛宮と同レベルの天然エロスなのかー!」 「あ、そうだ、この装飾品とか付けてみたらどうかしら?」 「グッドアイデアですわ」 「ぬあー、変な物付けるなー!」 「うーむ、普段どう思われているのかよく分かるな」 床に転がったまま、一言漏らす。 「では衛宮、実際の所どうなのかね?」 「何が?」 「脱がせるスピードだ、確かにあれだけのドレスを……一分も掛からず脱がせられるかね?」 腕時計を見ながら問うてきた。 「いや、やったことないしなぁ……」 「では今夜あたり間桐嬢で実践してみてはどうかね? ……なんなら立ち会ってやっても良いぞ?」 「んな……」 「いや、冗談だ」 そんなに顔を赤くされてはこっちも照れてしまいます。 「お待たせいたしました」 実に良い笑顔のルヴィアが顔を出す。 無言の蒔寺がキャスターに連れられて現れる。 その姿は。 なんというか。 「アマゾネス?」 あ、へこんだ。 遠坂、物言いが直接すぎだよ。 「いーさいーさ……エロスとかよりも戦いの装束の方がかっこいーさ…… こんな恥ずかしい格好だからって悔しくなんかないぞー、へーんだ」 「いや、似合っているという意味だと思うぞ」 「そ、そうよ、欲情されるよりはよっぽどいいでしょ?」 どちらにしろアマゾネスの野生ぶり等の印象は揺るぎもしないが。 確かに着ている服はスケスケだ。 緩やかな服装なのに身体のラインが丸わかりなあたりとか。 「装飾品に懲りすぎよ、前のドレスのエレガントさがまるでなくなってしまっているじゃない」 イリヤが残念そうに言う。 確かに、頭の飾りはともかく、腕に付いているアレは、弓を番えやすいようにアマゾネスが装備していた物では無かろうか。 明らかにアマゾネスな印象はそれらの装飾品の原因だと思う。 「イマイチ反応が悪いですわね、失敗だったかしら?」 「野性味方面重視だったのがダメだったのかな? やっぱり上品さは必要だったようね」 「それじゃそれを踏まえて次のドレス行ってみましょうか」 「というか二人はもう勘弁してやれ、あの蒔寺が本格的に涙目だ」 具体的には部屋の片隅に体育座りで某SAZAEさんのテーマを口ずさんでいる辺りが。 「……残念、でも納得」 「家主に言われたら仕方ないですわね」 「それじゃ片付けましょうか?」 「そうですわね、少し調子に乗りすぎましたわ」 話しながらドレスを丁寧に片付けていった。 他の面々はどうして良いか迷っているようで、ドレスの片付けを手伝っている。 そのまま、気遣っている様子を見せながらも、なんと言っていいか分からず、部屋を出て行ってしまった。 ……少しフォローを入れておかねばいけないよな。 我々は四年待った。最後の一年は猛烈に待った。:「蒔寺、その、本当に似合ってるぞ? 欲情してしまうほどに」 だがもう待てぬ。自ら冒涜する者を待つわけには行かぬ。:無言で蒔寺の隣に座る事にした。 しかしあと三十分、最後の三十分待とう。共に起って義のために共に死ぬのだ。:無言で流れかけている涙を拭う事にした。
https://w.atwiki.jp/outerzone/pages/229.html
この聖杯戦争の参加者である衛藤可奈美とそのサーヴァントであるセイバーのクトリ・ノタ・セニオリスは自分たちの部屋で話し合いをしていた。 「それで可奈美はこれからどうするの?」 「私はこの聖杯戦争を止める! 誰も死なせたくない!」 「戦う理由は私と初めて会った時と変わらないわね」 クトリは可奈美らしいと想いながら言葉を続ける。 「それなら協力してくるマスターを探すのはどう? 君と同じように聖杯戦争を止めようとしているマスターはいると思うわよ? ただ、いたとしても数人ね………。 ほとんどのマスターは聖杯を狙ってると思うから………」 「それでも私は協力してくる人に会って見たい!」 可奈美はまっすぐな目でクトリにそう伝える。 「それなら協力してくるマスターを探さないとね」 「うん、きっと、見つかるよ!」 「その自信はどこから来るのよ………」 可奈美に呆れながらも可奈美らしいと想うクトリだった 〘ただ、可奈美には人殺しはさせたくないわね………。 可奈美の剣はきっと誰かを守る剣だから………。 もしもの時は私が………〙 心の中でそう想うクトリだった。 「それでクトリちゃん………」 「手合わせはしないわよ」 「まだなにも言ってないのに!?」 「この会話をするの何度めよ!!」 相変わらず手合わせを断られてる可奈美だった………。 【Cー4「マンション・可奈美の拠点/聖歴111年1月1日 未明】 【衛藤可奈美@刀使ノ巫女】 [状況]健康 [令呪]残り三画 [装備]御刀「千鳥」 [道具]なし [所持金]995万QP [思考・状況] 基本的行動方針:誰も殺さず、殺させず、全てを守る 1.協力してくるマスターを探す。 2.クトリちゃんとならなんとかなる! 【セイバー(クトリ・ノタ・セニオリス)@終末なにしてますか?忙しいですか?救ってもらっていいですか?】 [状態]健康 [装備]セニオリス [道具]なし [所持金]なし [思考・状況] 基本的行動方針:可奈美を最後まで守る。 1.可奈美に人殺しはさせない。
https://w.atwiki.jp/animefate/pages/49.html
その日は、紅く染まっていた椛が枯れそうになる、秋の終わりを予感させる季節だった。 日本、冬木市。訪れる寒さへの備えをする人々の群れがあちこちに点在している。 そんな町の中でも高層ビルの建ち並ぶ『街』の、更に天辺。 「諸君、遂に時は来た」 一際大きな建物の最上階に、厳かな男の声が響いた。 「それでは、今年がその」 男の周りには老人達が居た。 60代のでっぷりした小男、杖を手にした90近く見える翁。 その他にも5人近くが、会議室の席につき真っ正面に座る外国人の男に真剣な視線を向けていた。 正面の男は、枯れ木に威厳を持たせたようなこれまた老人だった。 しかし、周りの有象無象の老人を「腹に一物持った老獪な大臣」とでも表現するならば 彼だけは「傲慢さを隠すことなく中心に君臨し続ける老王」と評すべきほど雰囲気が違う。 器が違う、と言い換えても良いだろう。枯れ木のような男がこの会合の中心人物と見てまず間違いない。 正しく家臣と君主のような力関係を持つ彼らを少し離れて見るのは、スーツを着こなした女秘書だ。 彼女は誰にも気付かれぬようそっと窓まで近づき、カーテンを閉めた。 「今年、この冬木で聖杯戦争が行われるのですね」 「そうでなければ、わざわざこんな辺鄙な国まで私自ら出向くなどあり得ん」 「仰るとおりで」「それはもう」「有り難いことです」 母国を虚仮にされた老人達は、しかし男の機嫌を取ることにしか興味がないらしい。 彼らに愛国心というものは存在しない。望みは保身、名誉、金といったところか。 明日日本が滅んでも、自分たちの権益さえ変わらなければ何も変わらない一生を送るに違いない。 全く操りやすい手駒だ、と男――――セラード・クェーツは内心で嘲笑した。 己の持つ奇跡を餌に釣った老人達は、これでもこの冬木の所謂重鎮らしい。 治安を守る警察署の署長までもがこちらについているというのは、笑うべきところなのだろう。 「今宵は我らの悲願、世界を手中に収める計画の記念すべき第一歩を踏み出す日となることだろう。 私の偉業を認めぬばかりか、時計塔から追放したあげく異端として抹消しようとする教会の下衆どもに鉄槌を下す。 そして、聖杯の奇跡により私はこの世界の頂点に立つ。尽力した貴様らにはそれ相応の椅子を用意してやろう」 おお、とどよめく冬木の中心人物達。 嘘か誠か涙を流すもの、感謝の意をマシンガンのように発するもの。 みな、等しくセラードの言葉を鵜呑みにし、自分たちが始末される可能性など爪の先ほども考えていない。 「それでは、これより降霊の儀を行う」 老人達の座る椅子で囲まれた会議室の真ん中には、既に魔法陣が描かれていた。 このビルの持ち主、右から三番目の席で汗を拭いている老人の部下達がこちらの指示通りに用意をしておいたらしい。 意味も分からず社長の指示で生き血を床に塗りたくる作業は、さぞかし馬鹿らしかったことだろう。哀れみさえ感じる。 勿論、そんな部下達は数日後に不幸な事故で亡くなる予定なのだが。隠蔽は完璧に行わなければならない。 「エニス、あれを持て」 呼ばれた女秘書が足下にあった大きなトランクをセラードの前に置く。 机に置かれたトランクはその在り来たりな外見に見合わず、生半可な魔術が直撃しても壊れることのない特注品だ。 セラードは厳重にかけられた四重のロックを順々に鍵で開け、その奥に封印されていた箱を取り出した。 その箱にも魔術的な札が幾多にも貼られており、彼以外の人間が触れた場合命を落とすことになる。 中に入っているのは 「それが……うっ!」 「――触媒だ」 クロバネ。 禍々しい『気』が、一番近くにいた老人の意識を刈り取った。 他の老人達も襲い来る寒気、頭痛に呻き、みな一様に畏怖をソレに向ける。 百戦錬磨の殺し屋に殺意と銃口を向けられたような、錯覚。 ソレは、悪意を顕し、害を為し、災いを引き起こすと、ヒトとしての本能が叫んでいる。 今すぐここから逃げ出したいと、常人なら誰もが思う、そんな代物。 しかし、セラードは隣で泡を吹いている男を完璧に無視し、そのクロバネを掴んでみせた。 「貴様ら如きの凡夫にも感じるものがあるだろう? これは私が世界各国を探し回り見つけた、最高の聖遺物だ。 入っていた棺には『我らの神、ここに眠る』と印されておった。 創世の幕開けに相応しい、ヒトを超越した神が我らを勝利へと導くだろう」 スーツを着た秘書は敬うようにゆっくりとハネを受け取り、陣の正面に配置された机に配置した。 そのまま、彼女は詠唱を開始する。 これには、別の意味で周りの老人達がざわついた。 彼女の手の甲に刻まれた令呪になど、全く気付いた様子もない。 「セ、セラード様。貴方様がマスターとなるのでは」 「恐れながら、あのような女よりも貴方様の方が」 不安に思わず口を出してしまう老人達を、セラードは 「無能共が」 言葉の刃で切り捨てる。 「貴様らの頭に入っているのは蛆か?蠅か?碌に考えもせず囀りおって。 何故私がこの大事にあの女、エニスを連れてきたと思っている。 今日のために『作った』アレを、ここで使わずどうするというのだ」 黒いスーツを着こなした女秘書、エニスは。 ホムンクルス(人造人間)である。 ♀♀♀ 私は、この日のために生きてきた。 いや、生かされてきた、と言い換えた方がニュアンスは伝わりやすいかもしれない。 私は生まれる際に聖杯に選ばれるように様々な『調節』を行われ、生まれてからは魔術に関する知識を叩き込まれた。 セラードが『喰って』得た戦闘技術も与えられ、実地演習という名目で、セラードを異端として殺しに来た代行者を殺したこともある。 セラードの細胞を触媒として作られたこの身は、彼の戦闘能力を十分に受け継いだということだろう。 母はいなかった。推測になるが何処かから攫ってきた女性の細胞を使い、その後殺したのだろう。 寂しいという感情は生まれなかった。私に母がいたという実感もあまり沸かなかった。 そもそも、情操教育などの要らない情報は極力カットされてきたので、私が母という概念を知ったのは生まれたからずいぶん経った後だったからだ。 メディアが発達した時代に隠し通せることではなかっただろうが、それでもセラードは「母」という存在、 そればかりか「愛情」や「友情」などを極力教えないようにしていた。 彼はホムンクルスに自我が生まれることを厭っていたのだ。 余計なことを口走った『兄弟姉妹』はみんな殺された。 私は「悲しい」という感情をそこで初めて知り、――そして心の奥底に封印した。 人形のような私だが、死ぬのは、嫌だった。 この気持ちさえも、自我なのかも知れないが。 そして、この瞬間。 「貴様がマスターか」 私は、死の目前にいた。 主、セラードは目の前で肉塊になっていた。 周りの老人達も似たような有様で、血の香りが閉じきられた部屋に充満している。 惨劇を作り出したのは、どう見ても私が呼び出したサーヴァントだった。 「俺に従え」 金髪に少し黒が混ざっている、変わった髪の男だった。 その眼差しは私を家畜、下手をすればそれ以下としか見ていないように感じる。 その手は白く歪なカタチをした刃と成っていた。 一瞬で私以外を切り刻んだのはこの武器――この場では凶器と言った方が似つかわしいように思う――だろう。 「従わなければ、殺す」 死にたくない、と素直に思った。 膝が震えている。呼吸がしにくい。唾を大きく飲み込む。 この日のために生きてきて他に何もない私だが、生物として生存本能は持ち合わせているようだった。 いくら機械のように育てられ、扱われてきても、そんなことで死の恐怖を乗り越えることは出来ないらしい。 ああ。確かに、私は今死にかけている。危機に瀕している。 しかし、それはサーヴァントの持つ刃によるものではなく――。 「なるほど、大した力だ」 肉塊が、声を出した。 「私でも反応するのがやっとで防御が間に合わん。 さすがは最優のサーヴァント――セイバーだ」 「面白くもない手品だな」 飛び散った血しぶきが、ズズズと蠢き出す。 落ちていた誰かの腕は、誰かのもとへと意志を持つように動き出した。 肉が、脂肪が、目玉が、爪が、髪が、骨が、血が。 戻っていく。所有者の許へと返っていく。 セラード・クェーツは、不死者だ。 「この力を見て大した反応もないとは、流石は神と崇められていた男だな。 そこの馬鹿共はこぞって這い蹲り、私に不死をねだったものだが」 「たかが再生能力の一つや二つ、珍しくもない」 セラードが冬木の権力者達を傘下におけたのは、この力によるものと言って良い。 奇跡を見せ、お前にも力を与えてやるから手を貸せ、と。 こういう具合で、彼は配下を増やしながら力をつけていった。 この不死にはいくつか仕掛けがあり、まずセラード以外の人間は不死身だが不老にはなれない。 さらに、セラードはその『出来損ない』の不死者達を一方的に『殺す』事が出来る。 結果として、餌に群がった虫達は彼の忠実な下僕となる。 死から遠ざかろうとセラードに近づき、結果として死を恐れ彼に服従するのだ。 元々、不老不死の術は彼自身が編み出した秘宝ではない。 発端は数百年前に遡る。 同じ志を持つ仲間とともに彼は大陸を渡り歩き、最終的に願いを叶える悪魔の召還術に手を出した。 そして、その悪魔との契約によって得た『不死の酒』を飲むことでセラードは不老不死となったらしい。 その後、異端として教会に追われながら研究を重ね、不老ではないが不死となる酒までは開発出来た。 あとはその『出来損ない』を使い冬木の権力者達のような配下を増やし、完全なる『不死の酒』を作るために各地で研究を続けている。 だから、正確に言えば聖杯戦争への参加は横道に逸れたものであって彼の本懐ではない。 何百年も生きている彼にとって、せいぜい『成功すれば御の字』レベルの実験なのだ。 成功すれば世界を牛耳るという願いが叶うし、失敗しても大した損害はない。ローリスクハイリターンだ。 そもそも、不老不死の身である彼からすれば時間などいくらでもあり、今回が駄目でも次回がある。 だからこそ、自らがマスターとはならず忠実なるホムンクルスを使って実験を行うつもりなのだろう。 それと、彼は絶対に否定するだろうが。 聖杯に選ばれた優秀なマスター、もしくは超常の力を持つサーヴァントならば『不死者を殺す』ことも出来るかも知れないという懸念もあったのだろう。 「滑稽だ」 その懸念が、早くも現実となりつつあるらしい。 セイバーの周囲に、正体不明の力場が発生する。見たこともない巨大な力の塊だ。 魔力パターンを照合。該当無し。完全にロストテクノロジーな産物らしい。 こんなものが開放されれば、少なくともこのビルそのものが吹き飛びかねない。 ようやく再生を終えた老人達が、ひいひい言いながら我先にと部屋から逃げ出した。 サーヴァントは残忍な笑みを浮かべながら老人を見据え、セラードは金髪の男に侮蔑の視線を帰す。 私に分かることは、セラードとセイバーはどう考えても良好な関係を築くことが出来なさそうだと言うこと。 少なくともセイバーはセラードを殺すことが出来ると思っていること。 それと。 「愚か者が」 「あっ………………」 私が死ぬかも知れない、ということ。 「存分にやってみるがいい。己のマスターがいなくなっても良いというのならばな」 セラードは私を『作る』際に色々と手を加えている。 分かりやすいもので言えば不死。私も、セラードのように死なない身体になっている。 セラードの細胞を使って生み出された私は、彼の分身とも言える存在なのだ。 そして、その副産物として――――。 「私の意志一つで貴様のマスターは細胞を破壊され、死を迎える。 私が死ねば、同様にこいつも死ぬ。そういう風に『作って』ある。 一番最初の脱落者は最優のサーヴァント、セイバー。死因は、自らの手によるマスター殺し。 なるほど、確かに――――滑稽だな?」 もしかしたら、セラードはこういう事態をも想定していたのだろうか。 彼にとってセイバーも、私も、聖杯戦争という儀式さえも、無限の寿命の中でいくらでも替えの効く存在なのだ。 気に入らなければ壊してしまえばいい。また新しいモノを作ればいい。 セラードは私という個体に、何の執着も未練も持ち合わせていなかった。 私のからだが、崩れていく。 操り人形の糸が切れたかのように、自由が奪われていく。 倒れ込んだ先の地面を冷たいとは思わなかった。ただ、痛かった。 既に体温が失われつつあるのだと他人事のように考察する。 セラードは、本気だった。 「セイバー……靴を舐めろ。それで今回のことは不問とする」 薄れゆく意識の中で、私はぼんやりとセイバーの視線を感じた。 彼の瞳に映るのは……激情だったか、諦観だったか、殺意だったか。 それとも――――憐憫だったか。 ♂♂♂ 「しばらくは、ここが私達の拠点となります」 「…………」 ホテルの一室で、私は生を実感していた。 どう見ても機嫌が悪いセイバーと一緒なのは些か命の危機を感じるが、それ以外は何の異常も見受けられない。 今日のために『作った』私に少しは期待をしているのか、興味や研究のためなのかは分からないが。 セラードは私を通して、少なくとも今回の聖杯戦争の様子を見るつもりにはなったようだ。 そう正直に話すと、セイバーの機嫌は更に悪くなったように見えた。 本当に靴を舐めたのかは……定かではない。ずけずけと聞くような蛮勇を私は持ち合わせてはいない。 そして、そのセラードは他のマスターやサーヴァントを恐れているのか別行動を取っている。 私と一緒にいれば嫌でも聖杯戦争に「参加」しなければならないので、その判断は正しいと言えよう。 それに、彼は彼独自に動き他マスター達の情報などを集めているのかも知れない。 冬木の権力者達を配下に置いたのは、彼らを使いこの戦いを有利に進めるためでもあるのだから。 いずれにせよ、近いうちに彼から指令が届くのだろうが、今は待機するほかない。 ぽふっ。 ベッドに横になる。セラードと別行動になるのは久しぶりだ。 ふかふかの毛布を実感できることが、生きていることが、少し嬉しかった。 「貴様は」 「はい?」 そんな私を見て舌打ちを隠しもせず、セイバーはイライラした口調で私に問いかける。 「あの屑に使われることを、なんとも思わないのか」 「……」 「ヒトの都合で作られ、使い潰され、挙げ句の果てに殺される。 貴様は…………それで良いのか」 考えたこともなかった、と言えば嘘になる。 しかし、考えたところで現実が好転するわけでもないし、その発想は危険だった。 私は聖杯戦争のために作られ、使われ、運が悪ければ殺される。 そういう存在なのだと思いこむことで、私は自我を表に出すことなく今まで存在を許されてきたのだから。 今この瞬間だって、セラードはどこから使い魔を使い目を見張らせているのか分からないのである。 余計なことは口走るべきではないし、ただ黙々と主人の命令を聞いていればいい。 「私はセラード様から、逃げられません。そういう運命なんです」 にも関わらず。 どういうわけか、私はそんな危険な言葉を、発していた。 「例え地球の反対側に逃げようともセラード様は指一つ動かすことなく私を殺せます。 逆に、私はセラード様を絶対に殺せません。だから……仕方ないんです」 セラードとの事務的な会話以外を、ずいぶん長い間してこなかったように感じる。 私には、頼れる仲間も甘えさせてくれる母もいなかった。 だからだろうか。こんな弱音を、本心を、出会って間もないサーヴァントに打ち明けてしまったのは。 そして。 この弁明は、私の本心からの言葉だったのだろうか。 今まで寡黙だったセイバーが、熱を持って私と向き合っている。 何かを思い出すかのように顔を歪め、真剣な眼差しで私を見つめてくる。 その事実に、長い間凍っていた私のココロが、突き動かされなかったと断言できるだろうか。 私は、何かに 「聖杯がある」 期待しては、いなかったか。 「私の動向はセラード様に逐一報告する義務があります。 使い魔も幾多に張り巡らされ、聖杯戦争の情報は彼にとって筒抜けと言っても良いでしょう。 仮に勝ち残ったところで……聖杯を手にするのは私ではなくセラード様です」 「そんなことは聞いていない」 つまらなそうなセイバーの声。いや、違う……怒っている。 セイバーが近づいてくる。比較的広いホテルの一室とはいえ、ものの数秒で私と彼の距離はゼロになる。 反応に困った私は、顔を背けた。これ以上はいけないと、態度で示す。 しかし。 「あっ…………」 心の距離さえも何の障害にもならないといった風に、セイバーはベッドの上の私を押し倒した。 熱い。身体が密着しているせいなのか、その他の要因のせいなのか。どうでも良い。 吐息がかかる。綺麗な瞳に吸い込まれそうになる。偶然なのか故意なのか、私の首に彼の手がかかった。 何故か、怖いという感情はなかった。不死であるということを考慮の外に置いても、そういう感情は一切抱かなかった。 そして、彼の口から紡ぎ出される言葉は、 聞きたくなかった、 聞きたかった、 禁断の、問答。 「貴様に願望は、ないのか」 その問いかけに、私は――――― 「―――――自由になりたい」 それは、私が生まれて初めて外に発露した『自我』だった。
https://w.atwiki.jp/sentakushi/pages/629.html
107 名前:隣町での聖杯戦争 ◆ftNZyoxtKM [sage 四日目・夜:血跡] 投稿日: 2007/01/18(木) 04 21 25 影がぶつかり合う。 一つは音にも迫らんばかりに一直線に空を駆ける。 対する一つは、耳障りな哄笑と狂気を散らしながら虚空にて待ちかまえる。 ……それは幾度となく繰り返された光景だ。 今現在切った札は互いに少なすぎる。 だが、それとて『空を飛ぶ』という一点でもって圧倒的なアドバンテージを有している。 クラスとして最優であるセイバー。 英霊であるその身をして、飛行するという力を持たぬ身である以上、虚実入り乱れる攻勢など不可能である。 その差をして拮抗しているという事実こそ奇妙。 バーサーカーは新たに札を切り、それをして攻めることは幾らでも可能なはずであった。 「くっ!」 セイバーはまたも一撃をいなされ、爪をその身に受けた。 だがその爪の先、腕を右手で掴み、腹部を狙う一撃。 半ば牽制ではあるが、無防備に受ければ肋骨を砕いて余りある威力だ。 その一撃を、セイバーの身体ごと回転して回避する。 バーサーカーは空中であることのアドバンテージを、これ以上無いほど生かしている。 その回転と同時、開いた左腕を突き出し、肩へ掌底を叩き込み、その反動を利用して再び足場へと戻る。 空中に、しかも足場から遠い場所に居る限り優位は動かないと認めたのは既に過去。 だから認めた段階で、作戦を変えた。 彼の『宝具』さえ使えばその状況も動くだろうが、消耗は極めて大きく、何よりこれ以上ないほどに目立つ、それこそ大地を、街を抉る光の剣が如く。 故にその使用は不可能。 そうであるが故に、バーサーカーが動いた瞬間こそが好機。 その瞬間を、息の殺して待ち続ける―― 「……よし」 少し不安ではあるが、相手も所持している以上、拳銃の攻撃性能は無視できるモノではない。 莫耶をベルトに挟み、拳銃を両手で構えて消え始めた足跡を追跡する。 勿論、罠の可能性もあるため警戒は必須だが、ただ体勢の立て直しのために逃げているのならここで倒さねばならない。 外の敵――バーサーカーと呼ばれていた――は紛れもない殺人鬼であり、そのマスターも確実に殺人を肯定し、それどころか罪があるのかと問うた。 そのような在り方であるが故に、衛宮士郎は、正義の味方を志す者はその在り方を否定しなければならない。 彼は人を犠牲にしない為に、戦っているのだから。 ビルを抉り取るように大きく開いた穴から先の部屋を覗き見て警戒する。 姿勢は出来るだけ低く、血痕を追跡する。 一つめ、二つめの部屋には特に何か置いてあることはなさそうだ。 血の跡を追い、続けて三つ目の部屋を覗き見る。 「……ん?」 部屋に血が広がっている。 溢れた跡と言うよりも、結果として溜まったような跡だ。 「後ろを警戒して立ち止まったのか? それとも何か……」 物陰から出て、血溜まりに触れる。 埃や破片で白く汚れているが、やはり乾いては居ない。 ふとその先を見る。 抉り取るような穴は変わらず、だが。 「血痕が、途切れている?」 突然すぎる出来事に、咄嗟の思考が追いつかない。 罠? だとすればこうして注目して動きが止まった段階で何かをされているはずだ。 周囲を見渡すが爆発物や細いワイヤーのような物は……ない。 「だとすれば……なんだ?」 バックトラック? いや、そうだったとしても血痕は残るだろうし、そんな元気があるならやはり攻撃をしてくるのではないだろうか? あの時使われた魔術は防御のみという事から、防御のみに特化しているという仮定の下で、さらに武器が無いとすればその疑問は解消できる。 「とはいえ、血の跡が消えたことの説明にはならないよな……いや、待てよ」 今夜の衛宮邸での戦いで、桜が腕に影を巻き付けて止血処理をしていた事を思い出す。 防御魔術の応用で、似たような事が出来るのか? 追撃を警戒しながら止血すると同時に、その処置の際に生じる自らの血の跡に注目させ、警戒させて距離を稼ぐ。 ……ありえるな。 強襲:そうはさせない、一気に追いかける 警戒:いや、そう考えさせるのも罠だとしたら? 投票結果 強襲 4 警戒 5 決定
https://w.atwiki.jp/sentakushi/pages/1074.html
635 :隣町での聖杯戦争 ◆ftNZyoxtKM:2007/08/24(金) 04 13 42 「……エンジンを掛けても大丈夫ですか?」 逸る心のままにそう問うた。 その言葉が引き金になったのか、シャリフさんが堰を切ったように笑い出した。 その笑い振りは、見ていて清々しいほどで、思わず三人して見入ってしまった。 「ああ……面白かった、こんなに笑ったのは、ひょっとしたら初めてかもしれないわ、真面目そうな外見の割に抜けてるのね、『姉さん』て」 涙さえ浮かべて笑っていたのか、目元を軽く拭いながらシャリフさんが言った。 「……こんなところでエンジン回したら大問題よ、色々とね」 その言葉で思い出した。 Y2Kの排気ガスはとんでもなく高温だ。 有毒ガスとかそんなレベルの事はこの場合問題ではなく、可燃性の物体に引火して小火になりかねない。 実際土蔵の中身は木製の卓袱台だの藤ねえが持ってきて処分に困ったポスターだのが保管という名前で放置されている。 やったことはないがこんな物に600度を超えるガスが叩き付けたら多分即座に発火する。 「……ライダー、ここでエンジンを回すのは危ない、小火になる」 「そうでした……それにキーも差さっていませんね」 「キーはここよ」 そう言って、シャリフさんが手品のように肩口からキーを取り出す。 まるでそこに袋があるかのように、服の切れ目のような場所――だがそこには縫い目すらない――からだ。 「……今のは?」 手品の類ではないのは分かる。 「さあ、何かしら?」 誤魔化すように笑い、ライダーにキーを放り投げる。 それを無言のまま受け取り、ポケットに仕舞い込む。 「まあ、騒音の問題もありますから、遮音の結界を展開して貰わないといけませんね……まあスラストに比べれば静かでしょうが」 「……ライダー、それどう考えても比べる物間違ってる」 スラスト、正確に言えばスラストSSCはモンスターマシンと言うよりもモンスターそのものだ。 Y2Kはヘリのエンジンを搭載しているがスラストSSCは戦闘機のエンジンを二機も搭載しており、地上でマッハを公式に記録した代物だ。 そもそもあのマシンは明らかに『乗りこなす』とかそう言ったレベルの代物では無い。 読んだ雑誌には書かれていなかったが、あの直進振りから考えてみれば、左右に方向転換するためのハンドルすら無いのかもしれない。 「それじゃ、確かに渡したわよ」 それだけ言って、用件は済んだとばかりに踵を返す。 「衝動的に手に入れた物だけど……大事にしてくれると、嬉しい」 最後の方は消え入りそうな声だったけれど、それでも聞き取れた。 「ええ、勿論、大事にさせて貰います」 もしかしたら、彼女は感情表現が苦手なのかもしれない。 桜にもライダーにもそう言った面はあるし、桜に喚ばれた彼女も同じなのかもしれないと、ぼんやりと思った。 ぼんやりと眺めた背中は、土蔵の中からはもう見えなくなっていた。 「それじゃ、俺達も戻ろうか?」 「……そうしましょうか」 『結局私はなんで呼ばれたんでしょうか?』と言いたげな、釈然としない表情で桜が頷く。 ……この事を知っておいて欲しかったからなんだろうとは思うが、正しいかどうかは分からないのでそれは口にしない事にした。 「では私も少ししたら向かいます、二人はお先に」 剥がした布地を戻しながらライダーが笑う。 戻しながら車体を撫で回し、機体のラインを確かめているようで、その様子はいつになく浮かれている。 まあ、気持ちは良く分かる。 即座に諦めたとはいえ、乗り回したくて仕方の無かった機体だ、それが目の前にあって乗る気になればいつでも乗れるとなれば、そりゃ浮かれるのも当然だろう。 事実、握ったままの布地は掛けられることなく、もう片方の手で撫でたまま、目を潤ませて顔を赤らめている。 なんというか、その表情は物凄く色っぽい。 「……さあ、行きましょう」 ライダーの姿をじっと見ていたら桜に頬を抓られた。 なんというか、凄く痛かった。 印籠:居間に戻る ジェム:自室に戻る クラウン:縁側に座り込む
https://w.atwiki.jp/tokyograil/pages/241.html
Who is in the center it is chaos? ◆GOn9rNo1ts 犯罪係数 92 シンデレラガール、渋谷凜の朝は早い。 輝かしい偶像(アイドル)の頂点に立つ彼女の一日は、いたって地味な朝のランニングから始まる。 服装は動きやすさを重視したジャージ。公道を走るのに煌びやかなドレスは必要ない。 傍らには小鼠の変わりに飼い犬であるハナコ。手には彼女が粗相をした際に処理をするための手提げ袋。 かぼちゃの馬車のお出迎えもなく、向かうお城も、今はなく。ただただ体を動かすために。 その日も、凜は自分の足で静かに、しかし確かな足取りで、トレーニングと犬の散歩を兼ねた『毎日』を開始した。 いつからこの日課を始めたのか、凜は覚えていない。 ダンスのレッスンで体力不足を感じた時からだっただろうか。 デビューシングル曲が決まった時だっただろうか。 ライブへの出演が決まった時だろうか。それとも、はじめて総選挙の順位が発表された時だろうか。 分からない。 ただ、何か特別なことがあって、始めたのだろうなとは思う。 不足を感じたのか、向上を願ったのか。新たな階段を、登りたくなった。 いずれにせよ、この地道な一歩一歩が今の渋谷凜を、アイドルとしての渋谷凜を確立させていることは、疑いようのない事実だ。 最初は『特別』で始まったことが、今や日課と化すほどに『当たり前』となっていて。 例え、ほとんどすべてが偽物の街に放り込まれたとしても。 例え、誰かと殺し合いをしなければならないと知らされたとしても。 例え、得体のしれないおっさんと四六時中一緒にいなければならない日々に暗鬱を抱えても。 この当たり前を続けていることで、彼女は浮足立ちそうな現実に足をつけ、息が詰まりそうな空気にほ、っと一息をついている。 そんな気がした。 思えば、この世界を生き抜くためには無意味なレッスンに行き続けているのも『彼女』に会って『当たり前』を手にしたいから、なのかもしれない。 「おはようございます」 ともかく。 現実から逃避したいがための。 もしくは――現実にしがみ付きたいがための。 彼女の『当たり前』は。 かつて『特別』が始まったこの道で。 今回もまた、終わりを告げた。 「お会いできて光栄です、シンデレラガール」 彼は、黒のスーツを纏っていた。 「いえ、今はこう呼ばせていただきましょう」 彼は、三白眼だった。 「聖杯戦争参加者、渋谷凜さん」 彼は、突然に『特別』を与えに来た。 「貴女に、運営からの通達があります」 彼は、名刺の変わりに拳銃のようなものを凜に向けていた。 「……場所、移しても良い?」 これ以上、この『特別』が自分の『当たり前』を浸食していくのが厭で。 これ以上、彼女をシンデレラに変えてくれた『彼』との出会いを塗り潰されたくなくて。 凜は苦々しい顔を隠そうともせず、そう言った。 ◇ ◇ ◇ 「いやあ、助かりました。通常は封筒を郵送させていただくのですが、渋谷さんの場合はお家の方に先に開けられてしまう可能性もありましたので」 銃口を向けた無礼への謝罪を聞き続けながら辿り着いた公園で、彼――東金と名乗った男は開口一番そう言った。 「それにしても矢張りといいますか、全アイドルの頂点ともなるとこんな朝早くからトレーニングに励むものなのですなあ。 まだ年若いにも関わらず大人顔負けのプロ精神。感服するばかりですよ」 「それで、なに」 世辞など聞き飽きていると言わんばかりの必要最低限な反応。 もしくは、シンデレラへの階段を登り続けてきた中で自然と身に着けた「警戒すべき相手への対処法」とでもいうべきか。 そんなぶっきらぼうさに怯むこともなく、彼女より干支一周分は大人な男は言葉を続ける。 「わかりました。早速本題に入らせていただきます。 本日、聖杯戦争運営側から聖杯戦争参加者の皆さんへ討伐クエストが発令されました。 バーサーカー・ギーグ及びそのマスターであるジョーカーの討伐です」 「討伐?」 「詳しくはこちらをどうぞ」 眉をひそめる凜を尻目に、東金は手際よく封筒をポケットから取り出した。 どこにでもある普通の封筒だった。「聖杯戦争参加者の皆様へ」なんて文言が冗談のようにさえ感じられる。 早速封を切り、軽く目を通し始めた凜。 あくまでも冷静に、平静を保ちながら読み進めていく。 そんな彼女の見えないところで、東金の顔が悪鬼のように醜く歪んだ。 「やつらは聖杯戦争をする気がない」 凜の身体がほんの数ミリ揺れ、表情が一瞬強張った。 舐め回すように凜を観察していた東金は、あえて何も反応しなかった。 「やつらはクズだ。生きている価値のない、人以下のゴミクズだ。 信じられますか、渋谷さん。やつらは強盗にも、殺人にも、強姦にも、何一つ意味をもっていないんです」 意味もなく、犯罪を犯し続ける。 それがジョーカー。生粋の狂人。 罰を受けるべき罪人。 「そんな無秩序極まりない存在は、消さねばならない。 聖杯戦争に臨む覚悟もなく、自分のしたいことだけをして生き続ける。 決して許される存在ではない。そうは思いませんか、渋谷さん」 「……だからって、よってたかって殺す、ってのはどうなのかな」 「聖杯戦争のために生まれたこの世界における罪とは、何だと思いますか、渋谷さん?」 凜は、答えられなかった。 東金の目から逃れるように、手紙を読み続けるふりをして、ただひたすら目を動かした。 ただ、この時間が早く終わらないかと。等身大の、女の子のように。 東金は、楽しそうにそれを見つめていた。 「可愛いわんちゃんですね。私もよく、小さい頃に子犬と戯れたものです」 東金の腕がハナコの頭へと伸びていく。凜は、はっと顔を上げる。 何故か、意味もなく唾をのんだ。 頭を撫でる。ただそれだけの行為のはずなのに。 なんだか酷く、暴力的な気配を感じているように。 ハナコは尻尾を振らなかった。 代わりに大きく、欠伸をした。 ぱさり。 「おっと」 小型犬に手を伸ばそうとしゃがんだ拍子に、東金の内ポケットから一枚の写真が落ちる。 凜は見た。 東金とハナコから目を離せなかった結果。 見てしまった。 写真に写っていたのは、一見、何か分からない『物体』 奇抜な飾り付けをされた奇妙なオブジェ。 かの高名な芸術家の前衛的な作品ですと美術館で紹介されれば、信じてしまうかもしれない。 但し、それが公共の場では芸術作品足りえない理由がある。 その『物体』のちょうどてっぺんに。 『顔』が乗っていた。 明るい栗色の髪に、凜は見覚えがあった。 オブジェを飾りたてる襤褸切れの暖かい色合いに、凜は見覚えがあった。 オブジェの足元に何故かきちんと両揃えで置かれている、ぴかぴかに磨かれたスニーカーに、凜は見覚えがあった。 それは それは 「失礼しました。忘れてください」 今、自分がどんな顔をしているのか、凜は分からなかった。 決して鏡で見たくないような、そんなアイドルらしからぬ顔だろうとは、想像がついた。 「……痛ましい事件でした。被害者は誰にでも好かれる、学園のアイドルだったそうです。 このような悲劇を一日でも早く終わらせるために、ジョーカーは倒さなければなりません」 ハナコが、また大きく欠伸をする。 凜は力が抜けたようにしゃがみ込み、震える手でハナコを抱き寄せる。 大丈夫、大丈夫、と。言い聞かせるように呟いた。 「貴女がどのような決断をするか、それは私の預かり知らぬところです。 ですが、少なくともご家族や友人やアイドル仲間の皆さんには、それとなく夜分の外出を止めるように勧めたほうが良いでしょう」 『彼女』は、最近ずっと遅くまでレッスンに励んでいるようだった。 『彼女』の家は、凜の家よりもレッスン場から遠いところにあった気がする。 凜はいつもレッスンの帰りに、『彼女』と凜の家の前で別れていた。 「最も、ジョーカーは他人の家へ当たり前のように侵入し一家惨殺を行っています。 サーヴァントを持たぬ人間にとっては、この世界で安全なところなどないのでしょうがね」 サーヴァント。超常の存在。凜が持つ、武器にして防具。 その力を行使すれば、ジョーカーを前にしても身を守ることができるだろう。 だけど『彼女』は? 「ああ、一つ言い忘れていました」 ひたり、と。 東金が、凜の前に一歩を踏み出す。 最後の一押しを、押すように。 「ジョーカーを殺した場合でも、貴女が殺人犯として捕まることはありません。 流石に、英雄として祭り上げられることはないでしょうが……討伐依頼書に記載の通り、報酬も御座います。 少なくとも、新聞一面に『シンデレラガールの知られざる一面!』なんてことはありえません。そのために我々運営がいます」 我々は、世界は、貴女の味方です、渋谷凜さん。 ジョーカーは悪で、貴女は正義だ。 人殺しの化け物を打倒し、大切なものを守る、正義の味方だ。 そんな毒が、零れ落ちていく温かい思い出に代わって、凜へ流し込まれていく。 「それでは、貴重なお時間をありがとうございました」 「…………」 お互いに、話すことはもう何もなかった。 凜は、胸に抱えたハナコの温かさを感じながら、走る。 悲鳴を上げかけているような顔で。今にも泣き出しそうな顔で。 それでもきっと、彼女は何事もなかったかのように家に着き家族に会い、何事もなかったかのように学校へ向かい友人たちと談笑するのだろう。 それぐらいは出来る演技力を、シンデレラガールは身につけてしまっていた。 だけど、それでも。 渋谷凜は『彼女』の――島村卯月の、太陽のような笑顔に一刻も早く会いたかった。 「頑張って下さい」 その言葉は、渋谷凜に届かなかった。 犯罪係数 64 ◇ ◇ ◇ 執行対象ではありません、トリガーをロックします 「なかなかに手強いですな」 東金朔夜は渋谷凜の姿が完全に見えなくなったことを確認してから、己の手に握られた拳銃に声をかけた。 「何度か挑発も行ったのですが……反応さえありません」 「マスターを守る気がないのか、守れるという絶対の自信があるのか」 「それとも、こちらの意図を読んでいるのか」 懸念事項、対象が解析系スキルもしくは宝具を持っていた場合、当騎の宝具を視認された可能性は今後に悪影響を与えかねません 「その点においては申し開きのしようも御座いません」 「軽率な判断でした。ただ」 「彼女の、シンデレラガールの今の色を見ておきたかったものですから」 ……………… 「なに、御心配には及びません。マスターである渋谷凜は聖杯戦争へと臨む覚悟を決めたようですし」 「いずれ、サーヴァントの方も尻尾を出さざるを得ません」 東金執行官は引き続き任務に励んで下さい 「お任せください。全ては、シビュラによる完全統治のために」 ◇ ◇ ◇ 知っている顔 知らない貌 うた 東金朔夜 シビュラシステム 知っている顔 知らない貌 Who are you ? 貴女は シンデレラ ガール 誰もが羨む ヒロイン 全国民の 知っている顔 そしてお前は 従者 誰もが知らない 怪物 名前も分からぬ 知らない貌 光に 紛・れ・て 闇は静かに ひ・そ・む 俺ら 全てを 支配しなくちゃ 気が済まねえ DOMINATE! 知っている顔 知らない貌 お前たちは 秩序? 混沌? 善か? 悪か? 知りたいのさ Sibyl System 深刻なエラーが発生しました 深刻なエラーが発生しました 深刻なエラーが発生しました 当システムのエラーを確認しました エラーを引き起こしたバグへの対処を最優先で行います 汚染箇所を確認します 汚染範囲を測定します 汚染強度、狂 対処法を協議します しばらくお待ちください 協議の結果、汚染範囲を廃棄することに決定しました 当騎における0.76%を廃棄します バグの侵入経路を推測します ケーブルから侵入の可能性、大 汚染範囲における電力供給ケーブルを切除します 調査の結果、該当ケーブルは千代田区の余剰電力を供給していたものと判明しました 対象地区の警戒度をD→Bに上昇させます また、当騎の精神障壁を突破したことから対象バグの危険性を暫定的にAランクに認定します 監視官及び執行官の維持、問題ありません 禾生壌宗との同調、問題ありません 聖杯との接続、問題ありません ムーンセル及び東京との連絡、問題ありません 全機能の復旧、並びに正常動作を確認しました 当騎の完全性は、保たれています 引き続きルーラーとしてご利用の程、宜しくお願い致します ◇ ◇ ◇ 姫は騎士へと歩を進め。 狗はエモノを鋭く見つめ。 王はUTSUWAに毒される。 …………フフフ 復讐。義憤。愛情。正義。 大義名分の名のもとに。 闇へその身を沈ませる。 そして、この小話の語り部たる 私 は。 ハハハハハハハハハハハハ! ■■■■■■■■は、彼ら全てを高みから嘲う。 【A-4/渋谷/1日目 早朝】 【渋谷凜@アイドルマスター シンデレラガールズ】 [状態] 精神的に少し不安定。犯罪係数64 [令呪]残り3画 [装備] 手持ちバッグ(散歩グッズ入り) ハナコ [道具] なし [所持金] 手持ちは高校生のおこづかい程度。 [思考・状況] 基本行動方針: 私は…… 1. 今はただ、島村卯月に会いたい。 2. ジョーカーを……? [備考] ※ジョーカー討伐クエストの詳細を把握しました。 ※ジョーカー&バーサーカー組の情報を把握しました。 【ランサー(アドルフ・ヒトラー)@ペルソナ2罪】 [状態] 健康。 [装備] ロンギヌス [道具] なし [所持金] なし [思考・状況] 基本行動方針:愉しむ。 1.愉しい。 [備考] ※ジョーカー討伐クエストの詳細を把握しました。 ※ジョーカー&バーサーカー組の情報を把握しました。 ※ 検閲済み 007 一人×2 投下順 009 誓いの爪痕 006 俺たちは闇から光を見ている 時系列順 011 誰も知らないあなたの仮面 BACK 登場キャラ NEXT 000 DAY BEFORE:闇夜が連れてきた運命 渋谷凛&ランサー(アドルフ・ヒトラー) 015 禍々しくも聖なるかな
https://w.atwiki.jp/psyren_wars/pages/44.html
Vのため闘う者/老兵は死なず ◆A23CJmo9LE 『天戯弥勒か、またうさんくせーのが出て来たな。おまけにうっとおしい立場まで与えてくれやがって』 暗闇の中で語られた聖杯戦争の概要。それは予想したものと大きく違う物ではない、そう思った。実際聖杯なんて物に縋るロクデナシども…ましてや親殺しなんて考えるおれのような奴が集う殺し合いなんて、殺伐としたものだと思っていたが…… 『アッシュフォード学園の生徒だぁ?ちんたら学生生活送れってのかよ』 おまけにこのテレホンカードを使えば途中棄権可能ときた。存外ヌルイじゃねえか。 『本当に殺し合わせる気あんのかね、あいつ』 『おそらく何か意味があるんだろうよ』 念話での独り言に律儀に答えるライダー。生前の彼はなんだかよくわからないもの…‘ひとつなぎの大秘宝’を求めた者たち、そしてそこに眠る意思を知っている。ロジャーの遺志、Dの意思。聖杯もおそらく同じ、天戯のやつは何か目的をもっている。 『聖杯に必要なのか、あいつの目的に必要なのかは分からねェがな』 『邪魔なルールが多すぎるぜ、こいつは』 学生生活など今更送るつもりはない…ないが、欠席している生徒というのはあまりにも露骨にマスターだとばれるのではないか?真っ向からのバトルロイヤルを考えていた身としては回りくどくて仕方ない。 それにこのテレカ。おやじを殺せる能力者なら協力を求めるつもりだったが……これでどこぞに帰られちゃ人材確保は難しいんじゃないか?いっそ公衆電話の類をぶっ壊すか? いや、それより聖杯をとることを考えるべきなんだろう…… 『いくぞ、ライダー。学園とやらの下見だ。お前の戦闘は目立つようだからな』 『ああ、それで出てたのか。月も綺麗だし散歩かと思ったぜ、グラララ。戦闘なら海に行きたいもんだがそうはいかねぇか』 戦地で、すでに開戦したというのに散歩などと言ってのける男は器が大きいのか呑気なのか。 強力なサーヴァントゆえの自負でもあろうが、大型船の召喚に地震とその分目立つ。敵に目をつけられないためにも戦地は選ぶべきだろう。 敵がどのくらいいるのか、学園に登校した場合不利にならないか、それを考えるためにも戦地の偵察に二人は動いた。 ――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― ゆらゆらと、夜闇に溶ける黒衣の男……学生服の青年と、執事服の老人が夜の町で向かい合う。 「よい夜ですな、若僧(ボーイ)?」 語りかける執事(バトラー)。その目はすでに殺意でぎらついている。 「本当にいい夜。こんな夜ですもの、血もたぎるというもの。静かで…本当にいい夜」 継いで語る女吸血鬼(ドラキュリーナ)。学生服の男の傍らに感じる戦士のにおい……それを感じて霊体化を解き、彼女も闘争心をたぎらせる。 それを受けて伝説の海賊もまた姿を現す。 「コウモリのような翼、白い肌に赤い眼……お前、まさか吸血鬼か?」 「あら、よく分かったじゃない。そう、私はツェペシュの幼き末裔、永遠に紅い幼き月。此度はランサーのクラスとして現界したわ。あなたは…海の男ね?焼けた肌がとてもキレイ」 「あァ、それなりに名の通った海賊さ。おれはさっきまでマスターと吸血鬼について話してたんで分かったが、そっちはいい目してやがる」 穏やかに言葉を交わしながらも確かに戦意を酌み交わす。ただ在るだけで威厳に満ちた王のやり取りは多くの英霊が集うこの地でも希少なものだろう。 「吸血鬼の嬢ちゃん、聞きたいことがある」 「何かしら、人間?」 王の問答に割り込むはこの場で最も年若い青年。その目に宿す殺意の先は目前の敵か、遠き父か。 「吸血鬼の一部を取り込み不死身になっちまった奴を殺す方法、わかるかい?」 かつて尊属殺と言われた重罪を、罪人カインの子吸血鬼に問う。王の問答はとたん罪人同士の血なまぐさい会話に堕ちていく。場に満ちた殺意がそれをさらに醜く彩る。 「餓鬼が妙な質問するのね。日光や白木の杭じゃ死なない、のよねぇ。ただ吸血鬼に成ったわけじゃないなら、私少食だから眷属いなくてよく分からないわ。ドラキュラ殺しの執事なら何かわかるかしら?」 かわいらしい笑みを浮かべ、しかし残虐な文言を吐く。人がパンを食すように血を飲むのが吸血鬼(ミディアン)、吸血姫(ミディアン)、化物(ミディアン)。 彼女は執事にして主君である男に罪人の問いを渡すと 「ドラキュラ曰く、不死身の化物(フリークス)など存在しない。くたばるまで殺してやるのがただ一つの手段かと」 ただ、殺す。死神の回答は至ってシンプル。 「よく分かったよ。ありがたい助言(アドバイス)に礼を言うぜ、役立たず(ボンクラ)ども」 頭をつぶそーとも、粉みじんにしよーとも、削りとろーとも、死ななかったおやじがそれで死ぬなら苦労はない。 決別。その言葉を合図にするように4人は戦闘態勢に入る。 「こんなに月も紅いから、本気で殺すわよ」 宣言と共に飛びかかる吸血鬼。狙いは敵マスター、虹村刑兆。 その速度は最速のクラス、ランサーに恥じぬものだが 「!」 目前に大きな薙刀が振るわれ、軌道を変える。薙刀を構えたライダーがこちらを睨むと どん!!! と音が響いたような気がした。 それは数十万人に一人のみが持つ天賦の才、覇王色の覇気…その強大な気迫。ライダーと圧倒的な実力差があるものは意識を保つことすら適わずその身を折るが 「ふん」 レミリア・スカーレットは意に介さない。彼女は屈する側ではなく膝をつかせる側だ。 己がマスターである虹村刑兆に効果を及ばさないくらいは老いた身でも難しくない。 残る一人は…… 「ウォルター・C・ドルネーズ。ヘルシング家、およびランサー(お嬢様)の執事(バトラー)。元国境騎士団(ヘルシング)ゴミ処理係。行くぞ」 高らかに名乗りを上げ、刑兆に戦いを挑む。本来なら老いた彼では覇気に完全には耐え切れず一瞬ふらつく位の影響はあっただろう。 だが、カリスマ……ヒトラーに従う兵隊のような気持ち!邪教の教祖にあこがれる信者のような気持ち! レミリアの持つそれは本来のものではないため団体戦闘において意味を持たず、人を引き付けるのみ。だが、その魅力は主君のため戦いに臨む執事の戦意の原動力となる。 ゆえに。あるじ(レミリア)と共にある限り、執事(ウォルター)は伝説の大海賊に対しても気圧されることはない。 それを確かめたライダーはマスターに視線を軽く送ると 「おれが相手してやろう。永い夜になりそうだな……!!」 ランサーの前に立ちふさがって、薙刀から震動を放ちつつ切りかかる。当然ランサーは回避し、二人ともマスターから距離をとって闘い始めた。 「バッド・カンパニー!」 マスターたちもまた戦闘を始める。飛ばしてきたワイヤーをグリーンベレーに防がせる刑兆。 「おもちゃの兵隊…?奇妙なものを…」 「見えて…いるのか?」 互いの呟きに疑問を覚えるも戦場は動く。 ワイヤーを飛ばし、切り刻もうとするウォルター。それに対して刑兆は後手に回るざるを得ない。 体にグリーンベレー含む多くの歩兵を纏わせて防ぎ、アパッチのローターでの防御も行う。時折戦車や兵隊からの銃撃を行うも容易く回避すされてしまった。 (小さな軍隊…なんだ?ワイヤーを防ぐ瞬発力はあるらしい。吸血鬼や魔術師が扱うという使い魔か…?こちらからの攻撃は効かないくせにあちらの攻撃は十分な威力がある、当たれば少々厄介だ) (ワイヤーを飛ばす速度自体は人間のそれだ。スタンド…ザ・ハンドなんかに比べれば遅い。 遅いが…技量が半端じゃないし、人としてはかなりの速さだ。銃撃のタイミングも読まれているし、こちらは回避で精いっぱいだ。そもそもなぜスタンドが見えている?) 衰えたウォルターの技量と力では仕留めきれない。経験と速度の足りない刑兆もまた決定打に欠く。若さがあれば、億泰がいれば、とお互いにないものを求めてしまう。 膠着した状況を動かすのはサーヴァントの闘いと考え、闘いつづけながらもそちらの様子をうかがう二人。 巨躯の老人と殴り合う幼き少女。それは字面だけ見ればいろんな意味で警察沙汰だろうが… 小柄と翼から生じる音にも迫る速度を生かし、近接戦で体格の勝るライダーと渡りあうランサー。槍は用いていないが、得物の大きさゆえに近接戦に不利が生じるライダー相手には好判断と言えるだろう。吸血鬼の怪力でもって殴る、殴る、殴る、殴る。 だが対するライダーも歴戦の英雄。周囲を飛び交うランサーの攻撃を得物で、肘で、柄で受け、受けきれないものは震動と武装色による硬化、そして彼女を上回るパワーでいなす。僅かのダメージを受けつつも時折震動を放ち牽制する。回避は容易いが、これをマスターに向けて撃たれてはたまらないと攻めを急ぐランサー。 速度で勝るランサー、力で勝るライダー。夜の女王と海の皇の闘いは、侵略する女王と守る皇の形ではあるがこちらも概ね互角。開戦時の言葉通り、【永い夜】になるかと思われたが 「バッド・カンパニー!」 戦局が双方互角ならば、有効的な援護を決めた方が勝つ。ライダーの懐から現れ援護射撃を行うスタンド……視線と交換でマスターから借りていた隠し兵器。 レミリア・スカーレットは優れた戦士である。幻想郷という閉ざされた世界とはいえ鬼や天狗、様々な妖怪と闘い、数百年単位で積み上げた経験は人間の英霊では届くものではない。 しかし彼女が振るうは個の武勇。家族、仲間、友人、部下、様々な関係の者と肩を並べはしたが軍隊(カンパニー)を率いる闘いならばこの聖杯戦争においてエドワード・ニューゲートに並ぶものはない―――! (避け―――――きれない!?) 必死に回避の姿勢をとろうとするが指揮が巧みか、銃手の腕かその軌道は見事に心臓に届く……かと思われたが (何とも…ない?) 確かに直撃した。だがダメージはない。 バッド・カンパニー……スタンドは精神エネルギーのビジョンであり、幽霊ひいてはサーヴァントへも干渉可能である。しかしBランクの対魔力を持つランサーにダメージを与えるほどの高位の神秘を宿すには至らなかった。 しかしその銃撃は無意味ではない。 (くそっ、体勢が、まずい!弾幕を避ける癖が仇になった!) 一度回避のために崩れた姿勢は戻らない。その隙をつき、震動を纏った拳を 「ウェアアアアア!!!」 打ち放った。 「うぐっ…う…」 「お嬢様!!」 直撃を受け、吹き飛ばされるランサー。本人の飛翔スキルによる減速とウォルターの助力を受け、どうにか静止、体勢を立て直す。 それを見た刑兆は放たれたウォルターの牽制をいなし、ライダーの下へ合流する。形勢はライダー主従に傾いた。 戦局が変わった以上今までと同じ戦術はとれない、機動力の落ちたランサーでは今度は五分にならない可能性が高い。 (弾幕での遠距離戦?いや、あちらは衝撃波を放てるし、マスターの方もあの大量のヒトガタで援護が出来る。 ウォルターが遠距離攻撃できない、加えて魔術師ではない以上、手数でこちらが不利。ウォルターをかばうのも厳しくなるうえ、奴はライダーのはず。対魔力で弾幕が効かなかったらこちらが詰み) (今のような不意打ちが何度も使えるわけがねェ。遠距離戦に持ちこんでもいいが、奴がそれに対応した武器があると厄介、また千日手になる。ランサーを名乗りながら武器を見せてねェのも気にかかる) ( (宝具を使うか…?) ) かたや逆転のため、かたや決定打のため、切り札の開帳を考える。 運命を操る必中の槍を。長き旅を共にした乗機を。己が居城の再現を。己が家族の助力を。 こんな緒戦から…? 『退くわよウォルター、序盤から消耗は避けたい。いったん撤退して傷を癒す』 『認識しました、レミリアお嬢様(ヤー、マイマスター)』 飛翔スキルでもってウォルターを抱え、あさっての方向へ飛び立つランサー。騎兵の本懐を見せていないのは気になるが…海賊というなら陸上で有効な乗機が出るとは考えにくい。 それを見て震動波による追撃を考えるライダーだが 「よせ、あの市街地吹っ飛ばす気か?消耗してんのにこれ以上目だって敵を引き寄せると厄介だ。おれ達も引くぞ」 それを聞き、矛を収めるライダー。確かに、生前は無制限に放つことが出来た震動もサーヴァントの身では魔力を消費する。そこに慣れていなかった。 威力の割に燃費はいい部類だが、その威力もだいぶ落ちている。随分使い勝手が悪くなったものだ。 「グララララ…悪ィな、調子に乗っちまった。で、どうするよ?偵察なんて空気じゃなくなっちまったぜ」 「とにかく離れるぞ。騒ぎを聞きつけられて連戦なんざごめんだ。いったん帰って、色々考えることがありそうだ」 「学校とやらはどうすんだ?」 「なるようになる。行くぞ」 学生の身分なんて邪魔でしかないが、拠点が準備されているのは悪くねェ。 だが、思ったより疲れた。スタンドとサーヴァントの同時行使は慣れないとキツイな。 【C-3/街外れ/1日目 未明】 【虹村刑兆@ジョジョの奇妙な冒険】 [状態]疲労(小)、魔力消費(小) [令呪]残り3画 [装備]いつもの学ラン(ワイヤーで少し切れている) [道具]なし [思考・状況] 基本行動方針:おやじを殺す手段を探す。第一候補は聖杯。治す手段なら……? 0.まさかいきなり吸血鬼に会うとはな… 1.帰宅し、まず休養とそれから考察。 2.登校するかどうかは気分次第。 3.公衆電話は破壊する…? [備考] バッド・カンパニーがウォルターに見え、ランサーに効かなかったのを確認、疑問視しています。 明朝登校するかどうかは後続の方にお任せします。 【ライダー(エドワード・ニューゲート)@ONE PIECE】 [状態]疲労(小)、魔力消費(小) [装備]大薙刀 [道具]なし [思考・状況] 基本行動方針:刑兆の行く末を見届ける 1.刑兆と共に帰宅、考察。 2.できれば海に行きたい [備考] NPCの存在、生活基盤の存在及びテレカのルールは聖杯、もしくは天戯弥勒の目的に必要なものと考えています。 [共通備考] ウォルター&ランサー(レミリア・スカーレット)と交戦、宝具なしでの戦闘手段と吸血鬼であることを把握しました。 B-2の現在地から歩いて少しのところにこの世界における自宅があります。具体的なことは後続の方にお任せします。 [地域備考] C-3市街地の外れで戦闘を行いました。バッド・カンパニーの銃声が響き渡り、グラグラの実の震動が伝わりました。ただし銃声はスタンドのものであるためNPCには聞こえなかった可能性が高いです。 『あなたの言う通りだったわね、ウォルター。日傘片手に勝てる楽な闘争じゃあない』 『ええ、ですがこのくらいなら苦境の内にも入りません。我らならば勝てる戦です』 街外れを飛び、戦地を離れる主従。執事の諫言をうけ、昼の外出を避けたのは妙手だったと思い返す。 反省はしているようだが、戦意が萎えることはない。 そう、戦意は失わない。だが…… (あの年老いたサーヴァント…アーカードなどのような人外ではなく、人間のようだった。それがレミリアお嬢様…吸血鬼と互角にわたり合っていた……老いた身で) なぜ老年なのだ?サーヴァントとは全盛期で召喚されるものではないのか?何か理由が? 胸中を占める疑念と……僅かな嫉妬。詮無いことと分かっていながら先の戦闘で己の衰えを自覚した分、負の思いを感じざるを得なかった。 『さすがに疲れたわ。ダメージも小さくないしどこかで血がほしいわね』 『ふむ…』 余計な思いはいったん横に置く。 戦闘を終え、気が抜けたか外見相応の面が出たようだ。聖杯戦争の参加者以外の一般市民もいるようだしそれを頂くか…?しかし先の主従に吸血鬼とばれてしまっている以上目立つマネは避けた方がいいだろうか。病院から輸血用血液を確保することを考えるか…? 『早く行きましょ。ちなみに私はB型が好みよ』 【C-3/市街地上空/1日目 未明】 【ウォルター・C・ドルネーズ@出典】 [状態]健康、魔力消費(微小) [令呪]残り3画 [装備]鋼線(ワイヤー) [道具]なし [思考・状況] 基本行動方針:全盛期の力を取り戻すため、聖杯を手にする 1.レミリアの食事(血)の確保と休養。 2.打って出るのは夜間のみ。 3.ライダー(エドワード・ニューゲート)に対して僅かな嫉妬と疑念。 【ランサー(レミリア・スカーレット)@東方project】 [状態]ダメージ(中、スキル:吸血鬼により現在進行形で回復中)、魔力消費(小、現在進行形でダメージの回復に消耗中)、若干の空腹 [装備]なし [道具]なし [思考・状況] 基本行動方針:ウォルターのためにも聖杯戦争を勝ち抜く 1.食事と休養。ウォルター、はやくー 2.もう日傘片手で勝てるとは考えない。全力で行く。 [共通備考] 虹村刑兆&ライダー(エドワード・ニューゲート)と交戦、バッド・カンパニーのビジョンとおおよその効果、大薙刀と衝撃波(震動)を確認しました。発言とレミリアの判断より海賊のライダーと推察しています。 現在C-3の上空ですが、どこに向かって飛んでいるのか、レミリアの食事のためNPCを襲うか、病院やそれに準ずる施設に向かうか、そもそも施設の有無を知っているのかなどは後続の方にお任せします。 BACK NEXT 016 LIKE A HARD RAIN 投下順 018 ゴムと反射と悪党と 015 悪魔の証明 時系列順 018 ゴムと反射と悪党と BACK 登場キャラ NEXT 006 ウォルター・C・ドルネーズ&ランサー ウォルター・C・ドルネーズ&ランサー(レミリア・スカーレット) 028 あの空の向こう側へ 009 虹村形兆&ライダー 虹村形兆&ライダー(エドワード・ニューゲート) 027 MY TIME TO SHINE
https://w.atwiki.jp/sentakushi/pages/689.html
165 名前: 隣町での聖杯戦争 ◆ftNZyoxtKM [sage 五日目・昼:商店街へ] 投稿日: 2007/04/02(月) 04 31 34 「はやくはやくー!」 どこへ行くと言うわけでもないが、街中を無邪気に走りくるくると回る。 その姿はとても無邪気で可愛らしく、思わず笑みがこぼれる。 とはいえ、その無軌道に走り回る姿を見失わないように早足で追う。 「ふふーんだ、新しい服ではしゃぎたくなるのも分かるけど、まだ子供って事ね」 イリヤはふわりと髪をかき上げて少しだけ勝ち誇っているが、視線は服の入った袋に注がれている。 やっぱり着て歩いてみたいんだろうなあ。 とは言っても、既に店は出ちゃってるからどこかで着替えさせることもできないし、 それに、もしそれを言ったらプライドを傷つけられたと思って機嫌を悪くしてしまうかもしれない。 ……うん、イリヤには悪いが見なかったことにしよう。 そういえば色々と買う物があったんだった、商店街へ行こう。 「桜、忘れてたけど商店街によって買い物をしていこう、確か切れてるのは醤油、だっけ?」 「あ……はい、そうですね、私も忘れてました……ここからなら、バスの方が良いですかね?」 軽く周囲を見渡して場所を確認する。 「んー、そうだな、ここからならバス停も近いし、そうしようか……ちょっとイリヤと服を頼む」 桜にイリヤと荷物を預けてノインを追いかけることにする。 「シロウー、私は子供じゃないんだからねー!」 「やれやれ……私は無視なのね、ま、いいけど」 そんな言葉を背中に受けながら、雑踏に消えかかるノインを追う。 「ノイーン、行くのはそっちじゃないぞー」 声を掛けながら追うと、ノインの足が止まり、振り返ってくれた。 「どこか行くの?」 「ああ、そうんんだけど……ノインはどこか行きたいのか?」 記憶が戻るきっかけのような物があったのかもしれない。 だとすれば買い物よりもそっちの方が…… 「んーん、別に、珍しいから見てただけだよ、みんなおとなしいなーって思って」 「そうかな? こんなもんだろうって思うけど……」 確かに見渡してみれば、辺りにいるのはビジネスマンばかりで忙しげに歩き回って、話し声は携帯電話の声だけだ。 時折女子高生らしき人々が話しているが、精々その程度の物で、確かにおとなしいといえばおとなしいのか。 ……ひょっとしたら、もっと騒がしい場所で生まれ育ったのかも知れない。 記憶はなくなっても、そう言う感覚はあっても不思議はない。 「士郎、これからどこに行くの?」 思考にふけっているとくいくいと袖を引っ張られた。 「あ、ああ、商店街だよ、夕食の食材とか買いに行くんだ」 「うん、それじゃあ急ご?」 にこりとノインが笑う。 ……なにやら気を遣わせてしまったような気もするなあ。 頭を掻き、もう片方の手でノインの手を握り、早足で歩き出した。 「シロウー! こっちこっちー! バス来ちゃったよー!」 「せんぱーい、ノインちゃーん、急いでくださーい」 イリヤはぶんぶんと手を振って、桜は両手を挙げてこちらを呼んでいる。 見れば名城は既にバスに乗り込んで料金を払っている。 お札だから恐らく人数分だろう。 「走るぞノイン」 「うんっ」 手を取って走り出し、どうにかバスに乗り込んだ。 「ふーっ、間に合った……」 「それじゃあ発車しますから、席にどうぞ」 「あ、はい、分かりました」 十五分ほどで商店街前のバス停で降りる。 「それじゃあとりあえず、軽い物から買っていこうか」 幾つか思いついた夕食の食材を思い浮かべながら歩き出すと―― ザクタンク:「おや、士郎ではないですか」ライダーが正面から歩いてきた ガンタンク:「あれ? どうしたのみんなして」遠坂が店から出てきた ギャンキャノン:「おお、衛宮ではないか」一成が声を掛けてきた 投票結果 ザクタンク:5 決定 ガンタンク:0 ギャンキャノン:4